
vol.75
April 30, 2025
地元の風景を次の世代へ、
「のろしファーム」が守る棚田と暮らし。
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富山県魚津市松倉地区にある「のろしファーム」は、若手生産者が中心となって、地域とともに米づくりを行うお米農家です。美しい棚田の風景を守りながら、おにぎりやおやきなどの商品づくりにも取り組み、農業の魅力をもっと身近に届ける活動を続けています。代表の稗苗(ひえなえ)さんは、「100年続く棚田」を目指して挑戦を続けています。

「のろしファーム」のはじまりと、原点にある想い
――事業として農業を始めようと考えたきっかけは何ですか?
稗苗さん:元々、私の実家は昔から農業と関わりが深かったのです。農業の衰退や担い手不足が社会問題として報道されていましたが、自分の育った集落でもまさにその通りの状況で…。農業を生産的に、持続可能な形で成り立たせたいと思ったことがきっかけです。
――なぜ農業に興味を持ったんですか?
稗苗さん:大学時代、ラオスで農村の研究をしていたのですが、そこでは物々交換をしながら暮らす自給自足の生活が今も残っていました。その光景を見たとき、幼い頃に祖母と一緒に田んぼを耕し、地域の人たちと協力して暮らしていた記憶と重なったんです。素朴だけれど、人とのつながりや自然と共にあるその暮らしに、強く惹かれました。
――どのような経緯で農業の道に進まれたのですか?
稗苗さん:今でこそ農業ベンチャーのような選択肢もありますが、当時はまだ少なくて。若いうちに現場に立ちたいと思い、生産者の道を選びました。ちょうどリーマンショックで就職が厳しかったのも、農業に進む後押しになった気がします。大変だったけど、今ではこの道を選んでよかったと思っています(笑)。


100年後も棚田がある風景を目指して
――「のろしファーム」という名前の由来を教えてください。
稗苗さん:この地域には「戦国のろし祭り」があり、かつて城下町が栄えていた歴史があります。地元の方にとって馴染みのある「のろし」という言葉を使うことで、地域に親しみを持ってもらえたらと思い、この名前にしました。地域密着の事業として、村おこしができるような存在になれたらという思いも込めています。
――どんな方が働いていますか?
稗苗さん:メンバーは20代が中心で、4月から10月の繁忙期には高校生のアルバイトもいます。最近は自然と関わりたい、体を動かす仕事がしたいと農業に興味を持つ若い人も増えています。昔ながらの家族経営とは違い、チームで協力しながら取り組む農業という新しいスタイルが、少しずつ広がってきていると感じます。
――のろしファームのビジョンを教えてください。
稗苗さん:私たちは「100年続く棚田」を目指しています。今、地域の棚田はどんどん減っていて、あと20年ほどで維持が難しくなるとも言われています。棚田は雨水を溜めて水害を防いだり、生き物のすみかになったり、独自の景観を生み出したりと、多くの役割を持っています。人の暮らしと自然が共存してできた、その価値を、次の世代へつなげていきたいと考えています。


「食べる」から始まる未来の農業
――おにぎりなどの商品開発もされているんですね!
稗苗さん:はい。無農薬のお米って、こだわっている人じゃないとなかなか届かない。だからこそ、「おにぎーり」や「ミスターおやき」など、手軽に食べられる形で広げたいと思ったんです。まずはおいしいと思ってもらえることで、農業や食べものの背景に関心を持ってもらえたら嬉しいですね。
――今後チャレンジしたいことはありますか?
稗苗さん:もっと気軽に農や自然と関われるような場をつくっていきたいと思っています。将来的には、棚田に囲まれた里山で宿泊して、農作業をしたり、四季の風景を感じたりできるような体験ができたらいいなと考えています。ただお米をつくるだけでなく、農村や里山の暮らしそのものを伝えていくことで、この風景の価値や大切さを、もっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。
――富山の中高生や若い世代に伝えたいことはありますか?
稗苗さん:自分が普段食べているものが、どこから来ているのかに少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。農業はつくる側だけの問題ではなくて、食べる側の意識によっても未来が変わる。まずは一歩、自分の暮らしの中から農業にふれてみてください!

のろしファーム NOROSHI FARM
豊かな水脈と人のぬくもりが残る里山から
おいしいお米をそのまま食卓へと届けたい。そんな思いから設立。農薬に頼らない有機農法と農薬も肥料も使わない自然農法が特徴のお米農家。
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